第4期アローバース 紹介と感想

「第4期アローバース」ポスター

 『アロー』から始まったアローバースも遂に4年目。『スーパーガール』『レジェンド・オブ・トゥモロー』が放送開始し、『コンスタンティン』が編入し、『ビクセン』の主人公が実写にも登場したという記念すべき年。更に、『アロー』の主人公が原案作品と同じ“グリーンアロー”を名乗ったという、非常にたまらない年になったわけです。筆者の場合、日本最速で觀れるAXNで毎年好きで追ってきたので、尚更たまらない。

 ……と、あまりにたまらないので、第4期アローバースとなる「アローS4」「フラッシュS2」「レジェンド・オブ・トゥモローS1」「スーパーガールS1」の紹介を交えつつ、稚拙ながらこのたまらなさ具合を文字にしてみる次第です。

 ここで一応、アローバースについて説明。

 アローバースとは、映画『アイアンマン』『アベンジャーズ』のマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)や、映画『バットマンvsスーパーマン』『スーサイド・スクワッド』のDC・エクステンデッド・ユニバース(DCEU)のように、複数の作品間で共有された世界観の通称。

 アローバースを構成する主な作品は、TVドラマ『ARROW/アロー』『THE FLASH/フラッシュ』『Legends of Tomorrow/レジェンド・オブ・トゥモロー』『SUPERGIRL/スーパーガール』、アニメ『VIXEN/ビクセン』『Freedom Fighters: The Ray』。本編とは矛盾点もあるようですが、コミカライズやノベライズもあります(※筆者は未読)。原作はDCEUと同じくDCコミックス

 アローバースの大きな特徴は、TVドラマ四作品が相互に絡みつつ同時進行している事。『アロー』のキャラが敵を追って『フラッシュ』に登場したり、フラッシュが『スーパーガール』に助太刀に現れたりなど。「フラッシュS2 Ep8」と「アローS4 Ep8」はそれぞれが大きなエピソードの前後編となっています。

 もう一つ大きな特徴は平行世界の存在。『アロー』『フラッシュ』『レジェンド・オブ・トゥモロー』はアース1と呼ばれる世界が舞台で、『スーパーガール』はアース38と呼ばれる世界が舞台です。DCEUや『GOTHAM/ゴッサム』など他のDC作品との関係は示されていませんが、90年代のTVドラマ『超音速ヒーロー ザ・フラッシュ』は平行世界の一つである模様。2015年に打ち切られたTVドラマ『コンスタンティン』は、打ち切り後にアース1の物語だった事になりました。

 これからアローバースを順に観たい方は、ネットで見つかる全作品をまとめてエピソードを時系列順に並べたリストを参考にするか、アローS1(第1期) → アローS2(第2期) → アローS3(第3期) → フラッシュS1(第4期) → スーパーガールS1(第4期) → アローS4(第4期) → フラッシュS2(第4期) → レジェンドオブトゥモローS1(第4期) という視聴順が個人的にはオススメです。

以下、第3期以前の内容を踏まえた上での、第4期の紹介と感想。
閲読は、視聴済みの方、今から全部の視聴は大変だという方、先を知っていたほうが視聴意欲が上がるという方などに推奨。

◯『ARROW/アロー』シーズン4

これまで: 海難事故で死亡したと思われていた大富豪のボンクラ息子 オリバー・クイーンが事故から5年を経て、故郷の街に帰還する。オリバーは、壮絶な5年間の中で望まずして手に入れた殺人スキルを活かし、“フードの男”として犯罪との戦いを開始する。だが、巨悪の企みを食い止め切れず、大勢の人々を死なせる結果を迎える(S1)。後悔の念に苛まれたオリバーは、心を改め、人々を救う為に戦うことを決意。たとえ相手が悪人でも命を救おうとするようになる(S2)。やがて“フードの男”は、人々からヒーロー“アロー”として認められるようになる。一方で、オリバー自身はアローとして生きるか、オリバー・クイーンとして生きるかのジレンマに陥る。そんな中、現れた偽アローよってアローの名が地に堕ちる事件が発生。アローの名を手放し、オリバー・クイーンとして偽アローから街を救ったオリバーは、仲間たちに街を託し、愛する者と共に街を去る(S3)。

シーズン4: オリバー不在の間に街は、謎の集団H.I.V.E.のテロによって地獄と化していた。仲間たちはオリバーを呼び戻し、オリバーも街の現状を目の当たりにしたことで再び戦うことを決意。オリバーはアローに代わる名“グリーンアロー”を名乗り、宣言する――自分が街の希望になろう、と。しかし、H.I.V.E.のリーダー ダミアン・ダークは標的をオリバー、そしてオリバーが大切にする人々へと定めていく。

 DCコミック『グリーンアロー』が原案のアローバース第1弾。バットマンやスーパーマンほどの知名度はないキャラクターを最初のヒーローにしたことがポイント。この作品は、超能力もなければ真っ当な人間でもない主人公が犠牲を払いつつもヒーローに成長していく姿が何より魅力。VFXに頼らない生身アクションも飽きない。当初「ノーラン版バットマンとライミ版スパイダーマンを混ぜたような」と言われていた作風は、次第に独自の色を帯びていった。この作品から『フラッシュ』や『レジェンド・オブ・トゥモロー』が派生したので、最もアローバースの変化を堪能できる作品とも言える。

 シーズン1で悪との戦いを始め、シーズン2で人々を救う為の戦いを決意し、シーズン3で二つの顔を持つことを見つめ直したオリバー。シーズン4はこれまでの伏線のほぼ全てが回収される総決算的内容で、覆面のヒーローとしてだけでなく素顔の政治家としても人々の力になろうとし始めたオリバーが過去最凶の敵を前に、自身の内なる闇と対峙することとなる。やがて彼が辿り着いた“グリーンアロー”というヒーローとは? あの街の人々にとって“グリーンアロー”とは? 最終話の興奮は過去最高潮に達する。

 自身の理想像に近づく一方、自身が否定してきた面も露わになるオリバー。そんな切なくも正と邪の両方を抱えたオリバーには他のヒーローにない魅力を感じる。今シーズンは何かと「希望」という単語が出るけれど、オリバーのこれまでを踏まえれば、陳腐な言葉には思えなかった。

 オリバーだけでなく、脇のテアとローレルの成長も感じられて良かった。市長を目指し始めた兄を健気に手助けするテアに、元婚約者としてオリバーの良き理解者となったローレル。このオリバーとローレルの不思議な関係が筆者はかなり好き。

 シーズン4は、専業主夫の才能を開花させてたオリバーや、「市長を目指す」と言ったら仲間達ほぼ全員に正気を疑われるオリバーなど、小ネタが多いのも楽しかった。

◯『THE FLASH/フラッシュ』シーズン2

これまで: 最先端科学の研究施設S.T.A.R.ラボの事故によって、科学捜査官のバリー・アレンは超人的なスピードを授かる。幼い頃に母親を正体不明の超常的存在に殺されているバリーは、尊敬するアローの推薦もあり、地上最速のヒーロー“フラッシュ”として超能力犯罪等から街を守る活動を始める。そんなフラッシュ誕生の裏側には、バリーの母親を殺したもう一人のフラッシュ“リバースフラッシュ”の存在があった(S1)。

シーズン2: フラッシュとリバースフラッシュの戦いの影響で、平行世界に通じる時空間の穴が開かれる。そして、平行世界 アース2から、フラッシュの力の源であるスピードフォースを狙う漆黒のフラッシュ“ズーム”が現れる。

 アローS3と同時期に始まったアローバース第2弾。アローS2に登場していた面々が主役。主人公が好青年なだけあって、爽やかな青春劇という印象の作品。そして、大作アクション映画さながらの迫力のVFXアクションが凄い。シーズン1はサム・ライミスパイダーマンに近しい作風と言えるかな。

 アイアンマンにはキャプテンアメリカが、スーパーマンにはバットマンがいるように、アローバースにおいてはアローにはフラッシュがいる。『アロー』と『フラッシュ』は作品自体もそんな対の関係を意識しているのか、要素を被せつつも真逆の展開を行なっている印象。セットで観ていると色々発見できて面白いかも。例えば、各シーズン1のメインヴィランは、アローのは「ヒロインの今カレの父親」、フラッシュのは「ヒロインの今カレの子孫」。各シーズン2開始時の状況は、アローが「失踪した主人公を仲間たちが探している」、フラッシュS2は「仲間たちが離れ、主人公のみがヒーロー活動している」。フラッシュS2最終話でのバリーとズームのやり取りも興味深い。

 シーズン2は更に進化したアクションと、時空間移動や神秘の力“スピードフォース”にまつわるSFミステリーが魅力。アース1とは所々正反対のアース2ネタも楽しい。一方、バリーがオリバーと比べて元からヒーロー気質なこともあり、ヒーロー成長劇面には少々物足なさも。

 それにしても、この作品、メインヒロインのアイリスを上手く動かしていかないと、今にもシスコの方がメインヒロインになってしまいそうだ。

◯『レジェンド・オブ・トゥモロー』シーズン1

あらすじ: 2166年、世界は不死の存在 ヴァンダル・サベッジによる破滅を迎えていた。時の番人の一人であるリップ・ハンターは世界を救うべく掟を破り、2016年でサベッジに対抗しうる者を集める。しかし、集められた者たちは、自分たちが「歴史にとって小さな存在」だからこそ集められた事実を知ることとなる。果たして、何者でもなかった彼らは時空間移動船 ウェーブライダーを駆って世界を破滅から救い、レジェンド=伝説になることができるのか?

 『アロー』『フラッシュ』に登場した脇役ヒーロー・ヴィランで構成される凸凹チーム“レジェンズ”の活躍を描いた作品。レジェンズは原案作品がなく、主役集合物でもないので、『アベンジャーズ』や『ジャスティスリーグ』とはコンセプトが少々異なる。何かとヒーロー同士が殴り合っていた2016年に、ヒーローとヴィランが共に巨悪に立ち向かう作品をやっていたのは面白い。

 物語はチームがタイムマシンで来訪した様々な時代で悪党相手に暴れまくるというもので、整合性より勢い重視。内容は「スーサイドスクワッド × ドクターフー」といったところ。勢いの良さと、元々脇役のキャラクターたちとオマージュ満載の物語が醸し出すB級感が、何とも楽しかった。LoT唯一の新キャラで「時の番人の仲間たちに逆らって時空を守る冒険に出た男」という設定のリップ・ハンターを、『ドクター・フー』俳優にやらせる小ネタっぷりも良い。次第に育まれていく凸凹チームの絆も見所。

 また、『アロー』『フラッシュ』では所詮レギュラー以下の脇役だったキャラクターが主役ということで、大々的に掘り下げられているのが何気に嬉しい。特にヒートウェーブことミックはこの作品でグンと魅力的なキャラクターに変わっていた。ミックの今後に期待大。

◯『SUPERGIRL/スーパーガール』シーズン1

あらすじ: 赤ん坊の従弟 カル=エルの保護者として、崩壊する母星から脱出した13歳の少女 カーラ・ゾー=エル。だが、地球に向かう途中に彼女だけが時間の静止した空間に囚われ、彼女が地球に着いた頃にはカル=エルはスーパーマンとして人々に知られる存在に成長していた。地球人の夫妻に引き取られたカーラは、亡き故郷を想いつつも必死に地球に溶け込もうと努める。そんなある日、カーラは墜落する旅客機を救うべくスーパーパワーを解放し、世間から注目を浴びてしまうことに。これを機にカーラは、従弟のようにヒーロー活動を始めることを決意する。しかし、問題が。カーラはスーパーパワーを長い間封じていたが故に上手く扱えなかったのだ。同じ頃、地球に潜伏していた宇宙人犯罪者たちがある計画の為に活動を開始していた。

 この作品の舞台となるアース38には、アローやフラッシュはおらず、ヒーローと言えばスーパーマンただ一人。完全無欠のスーパーヒーローたるスーパーマンと比べられつつも、自分を抑圧してきたカーラが突き抜け、ヒーローになっていく姿が痛快にして爽快。普段マスコミで働く身としてカーラが人々に贈る言葉には胸を熱くさせられる。他とは独立した世界が舞台なこともあり、個人的にアローバースでは一番オススメしやすい作品。

 『スーパーガール』は今の時代に珍しいくらい前向きなスーパーヒーロー物で、観ていて凄く励まされた。主人公カーラだけでなく、カーラの義姉アレックスを始めとする脇役もとても魅力的。どのキャラも悩みや陰を抱えつつも、支え合い、前を向こうとしている。「自分を肯定すること」がテーマにあったように思う。

 個人的に最も気に入ったキャラは、もう一人のヒーローとなるジョン・ジョーンズマーシャン・マンハンター。グリーンマーシャン最後の生き残りである彼は、異形の姿を地球人に化けて隠し、陰ながら第二の故郷・地球を守っていた。だが、非常事態時には地球人に嫌われることも恐れず真の姿に戻り(変身し)、スーパーマンにも匹敵する超常的な力を発揮して戦う。そんなダークヒーローっぷりが格好良かった。カーラやアレックスにとって、時に父のような存在であるのも頼もしい。


 アローバースは元々、超能力者どころかスーパーヒーローすら存在しなかった世界。現実世界と同じ状態だったわけです。

 そんな世界に遂に現れた最初のヒーローは、超能力もないのに弓矢で犯罪者に襲いかかる危険人物。まあ無賃金で悪人ぶちのめす人間なんて、危険人物なのも当然だと思ったものです(実際、劇中でも危険人物扱いされているのが個人的に良かった)。

 しかし、そんな危険人物もやがては心を改め、大切なものの為に戦い続け、本当のヒーローへ生まれ変わる。そのヒーローの影響を受けて、新しいヒーローたちも現れる。これが熱かった。更に並行して、超能力者や魔法使いなどトンデモ存在も現れる。現実に似た世界がスーパーヒーローの世界へと変化したわけです。

 この、現実世界からスーパーヒーロー世界への変移が、アローバース最大の魅力としてあるのではないでしょうか。