第4期アローバース 紹介と感想

 『アロー』から始まったアローバースも遂に4年目。『スーパーガール』と『レジェンド・オブ・トゥモロー』が放送開始し、『コンスタンティン』がアローバースに編入し、アニメ『ビクセン』の主人公が実写デビューしたという記念すべき年。更に言えば、『アロー』の主人公が原案コミックと同じく“グリーンアロー”を名乗ったという、非常にたまらん年になったわけです。自分の場合は、日本最速で觀れるAXNで毎年好きで追ってきたので、尚更たまらない。

 ……というわけで、あまりにたまらなすぎるので、稚拙ながら第4期アローバース作品となる『アローS4』『フラッシュS2』『レジェンド・オブ・トゥモローS1』『スーパーガールS1』の紹介を交えつつ、このたまらなささを文字にしてみる次第です。

 ここで一応、アローバースについて説明を。

 アローバースとは、映画『アイアンマン』『アベンジャーズ』のマーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)や、映画『バットマンvsスーパーマン』『スーサイド・スクワッド』のDC・エクステンデッド・ユニバース (DCEU)のように、複数の作品で共有されている作品舞台の名称。

 アローバースを構成する主たる作品は、TVドラマ『ARROW/アロー』『THE FLASH/フラッシュ』『Legends of Tomorrow/レジェンド・オブ・トゥモロー』『SUPERGIRL/スーパーガール』、アニメ『VIXEN/ビクセン』『Freedom Fighters: The Ray(17年公開予定)』。本編とは矛盾点もあるようですが、コミカライズやノベライズもあります。原作はDCEUと同じくDCコミックス社。

 アローバースの最も大きな特徴は、TVドラマ四作品を相互に絡ませつつ同時進行させているところ。『アロー』の登場人物が敵を追って『フラッシュ』に登場したり、フラッシュが『スーパーガール』に助太刀に現れたりしています。「フラッシュS1 Ep1」と「アローS3 Ep8」、「フラッシュS2 Ep8」と「アローS4 Ep8」はそれぞれが前後編となるエピソードを行なったりもしています。

 そして、もう一つ大きな特徴は平行世界設定。『アロー』や『フラッシュ』はアース1と呼ばれる世界が舞台ですが、『スーパーガール』はアース38と呼ばれる世界が舞台となっています。DCEUや『GOTHAM/ゴッサム』など他のDC作品がどうなのかは不明なものも、90年代のTVドラマ『超音速ヒーロー ザ・フラッシュ』は平行世界の一つである模様。2015年に打ち切られたTVドラマ『コンスタンティン』は、打ち切り後にアース1が舞台だったという事になりました。

 これからアローバースを順繰りに観たいという人は、ネットで探すと各作品の各話をまとめて時系列順に並べたリストがあるのでそれを参考にするか、アローS1(第1期) → アローS2(第2期) → アローS3(第3期) → フラッシュS1(第3期) → スーパーガールS1(第4期) → アローS4(第4期) → フラッシュS2(第4期) → レジェンドオブトゥモローS1(第4期) という視聴順が個人的にはオススメです。

以下、ある程度はボカして書いてはいますが、ネタバレを見たくない方は注意。

◯『ARROW/アロー』シーズン4

これまで: 海難事故で死んだと思われていた大富豪のボンクラ息子、オリバー・クイーンが事故から5年を経て故郷の街に帰還する。しかし、彼はその誰にも明かさぬ壮絶な5年間の中で殺人者へと変貌していた。望まずして手に入れた殺人のスキルを使い“フードの男”として悪党退治を始めるオリバーだったが、巨悪の企みを食い止め切れず、大勢の人々を死なせてしまう(S1)。後悔の念に苛まれたオリバーは、心を改め、人々を救う為に戦うことを決意し、例え悪党であろうと命を救おうとするようになる(S2)。やがて人々からアローと呼ばれるようになり、敵対していた警察にも認められていくオリバーだが、偽アローの出現によりアローの名は地に落ちてしまう。アローの名を手放し、オリバー・クイーンとして偽アローを倒し街を救ったオリバーは、仲間達に街を託し、愛する者と共に街を去っていった(S3)。

シーズン4: オリバーが去った後、暫くして街は謎の組織H.I.V.E.の襲撃によって地獄と化していた。仲間達はオリバーを呼び戻し、オリバーも街の現状を目の当たりにしたことで再び戦うことを決意。そして、アローに代わる名“グリーンアロー”を名乗り、オリバーは人々に宣言する――自分が街の希望になる、と。しかし、H.I.V.E.の首領ダミアン・ダークはそんなオリバーの決意を踏みにじるかの如く標的をオリバー、そして彼が大切する人達へと定めていく。

 DCコミック『グリーンアロー』を原案とする、記念すべきアローバース第1弾。バットマンやスーパーマンほどの超メジャーキャラではなく、時に「緑のバットマン」などと言われるグリーンアローが最初のヒーローなことがポイント。当初「ノーラン版バットマンとライミ版スパイダーマンを混ぜたような」と言われていた作風も、シリーズが続くに連れて独自の色を帯びてきました。一番アローバースの変化を堪能できる作品だと言えます。

 作品自体は、超能力者でもなければ真っ当な人間でもない主人公が、犠牲を払いつつも次第にヒーローになっていく姿が非常に魅力的。それに、VFXに頼らない生身のアクションは何だかんだ観ていて飽きないなと思います。アローバース作品はどれもメロドラマ要素がクドめで、暗い作風であるアローはそれが一層クドく感じやすいですが、このことを差し引いても自分の中では魅力の方が上回る作品です。

 シーズン4はこれまでの伏線が全て回収されるシリーズの総決算的内容。これまでの3シーズン間でクズっぷりが改善され、覆面のヒーローとしてだけでなく、表向きでも政治家として人々の助けになろうとし始めたオリバーが、過去最悪の敵を前に自身の心の闇と対峙することになる。やがて彼が辿り着いた“グリーンアロー”というヒーロー。「街の人々にとってのヒーローとは」も遂に描かれ、最終話は個人的に過去最高のものでした。

 自分が理想とするヒーローになる一方、自分が今まで否定してきた行動も取ってしまったオリバー。人々を希望で照らすヒーローとしての姿も、冷酷な殺人者としての姿も、どちらもオリバーの偽りなき姿という事実。そんな、切なくも正と邪の両方を抱えたオリバーは、やっぱり他にいない魅力を持ったヒーローだなと思います。今シーズンは何かと「希望」という言葉が出るけど、オリバーがこれまで経験してきたことを思えば、陳腐な言葉には感じなかったな。

 オリバーだけでなく、テアとローレルの成長っぷりも感慨深い。市長になると言い出した兄を健気にサポートするテアに、元婚約者としてオリバーの良き理解者になっているローレル。オリバーとテアの仲の良い兄妹っぷりは勿論、シーズン4のオリバーとローレルの関係性が自分はこの上ない程に好き。

 それとシーズン4は、専業主夫の才能を開花させてたオリバーとか、「市長を目指す」と言ったら仲間達ほぼ全員に正気を疑われるオリバーとか小ネタも多くて、そういうも楽しかった。

◯『THE FLASH/フラッシュ』シーズン2

これまで: 最先端科学の研究施設S.T.A.R.ラボの事故によって、科学捜査官の青年バリー・アレンは超スピードを授かる。幼い頃に母親を正体不明の超常的存在に殺されているバリーは、尊敬するアローの推しもあり、地上最速のヒーロー“フラッシュ”として超能力犯罪等の脅威から人々を守る活動を始める。しかし、フラッシュ誕生の裏側には、バリーの母親を殺したもう一人のフラッシュ“リバースフラッシュ”の存在があった(S1)。

シーズン2: バリーはリバースフラッシュに勝利するものも、戦いの影響で平行世界へ通じる時空間の穴が各地に開かれる。そんな平行世界の一つであるアース2から、バリーの超能力の源であるスピードフォースを狙う漆黒のフラッシュ“ズーム”が現れる。

 アローS3と同時期に始まったアローバース第2弾。アローS2に先行登場していた面々が主役です。『アロー』と比べると、主人公が好青年なだけあって、爽やかな青春劇という印象の作品。そして、大作アクション映画さながらの大迫力のVFXアクションが凄すぎる作品です。シーズン1はサム・ライミスパイダーマンに近しい作風で、日本ではアローバース内で一番人気があるように思えるかな。

 アイアンマンにはキャプテンアメリカが、スーパーマンにはバットマンがいるように、アローバースにおいてはアローにはフラッシュがいる。『アロー』と『フラッシュ』は作品自体もそんな対の関係を意識してるのか、要素を被せつつも真逆の展開をしていて、とセットで観ていると色々気付けて面白いかも。

 例えばシーズン1のメインヴィラン、アローS1のが「ヒロインの今カレの父親」なのに対し、フラッシュS1のは「ヒロインの今カレの子孫」。他には、シーズン2開始時の状況が、アローS2が「先の戦いで傷心し失踪した主人公を仲間達が探している」なのに対し、フラッシュS2は「先の戦いによる傷心で仲間達がチームを離れ、主人公だけが活動している」だとか。フラッシュS2最終話でのバリーとズームの会話にはニヤッとした。

 シーズン2は更に進化したアクションと、タイムトラベルや神秘の力“スピードフォース”にまつわるSFミステリー要素が魅力。一方、バリーがオリバーに比べて元からヒーロー気質なこともあり、ヒーロー成長劇面では物足りなかったかな。あとケイトリンやヘンリーなど一部キャラの扱いが些かぞんざいなように感じた。けど、他人に冷たいハリーが次第にデレてく姿はとても良かった。平行世界ネタが好きなので、その点も楽しかったな。

 しかし、この作品、アイリスを上手く動かしていかないと、今にもシスコの方がヒロインになってしまいそうだ。

◯『レジェンド・オブ・トゥモロー』シーズン1

あらすじ: 2166年、世界は不死の存在ヴァンダル・サベッジによって破滅の時を迎えていた。時の番人タイムマスターズの一人であるリップ・ハンターは破滅の未来を変える為に掟を破り、2016年でサベッジに対抗しうる人間を集める。しかし、集められたメンバーは自分達が「歴史にとってはちっぽけな存在」だからこそ、この未来を変えるミッションに集められたことを知ることになる。果たして、何者でもなかった彼らは時空間移動船ウェーブライダーを駆って世界を破滅から救い、レジェンド=伝説になることができるのか。

 『アロー』『フラッシュ』に登場した脇役ヒーロー・ヴィランで構成される凸凹混合チームの活躍を描いた作品。何かとヒーロー同士が殴り合っていた2016年に、ヒーローとヴィランが手を組んで巨悪に立ち向かう作品をやっていたのが面白い。レジェンズは原案のないアローバースオリジナルのヒーローチームである上に、主人公集合物でもないので、『アベンジャーズ』や『ジャスティスリーグ』とはコンセプトが少々異なります。

 物語は、チームがタイムマシンで来訪した様々な時代で悪党相手に暴れまくるという内容で、多少の整合性よりも勢い重視。作風は「スーサイドスクワッド × ドクターフー」といった感じ。時に苦い話ながらもそんなノリの良さと、元は脇役である主要キャラとオマージュ満載の物語が醸し出すB級感が、何とも楽しい作品だった。次第に育まれていく凸凹チームの絆も見所。

 このLoTは、『アロー』『フラッシュ』では所詮レギュラー以下の脇役だったキャラクター達が主役の作品であることが何より嬉しかったな。特にヒートウェーブことミックはこの作品でグンと魅力的なキャラクターになっていたから、今後の活躍にも期待大。シーズン2は戦国時代の日本を舞台にした回もあるそうで、ますます楽しみ。

 それにしても、LoT唯一の新キャラである「仲間の時の番人達に逆らって時空を守る冒険に出た男」というリップ・ハンターを、『ドクター・フー』俳優にやらせているのは、やっぱり狙ったものなんだろうか。

◯『SUPERGIRL/スーパーガール』シーズン1

あらすじ: 当時まだ赤ん坊だった従兄弟のスーパーマンことカル=エルと共に崩壊する星クリプトンから脱出した13歳の少女カーラ・ゾー=エル。だが、地球に向かう途中に自分だけ時間が静止した空間に囚われ、地球についた頃にはカル=エルは大人になっていた。その後カーラはカル=エルの紹介で地球人の夫妻に引き取られ、亡き故郷クリプトンの記憶を持ちながらも必死に地球に溶け込もうと過ごしてきた。そんなある時、カーラは事故に遭った義姉を救うべくスーパーパワーを解放し、世間から注目を浴びてしまう。これをきっかけにカーラは従兄弟のようにヒーロー活動を始めることを決意。しかし問題が。長い間カーラは能力を封じ込めてきた為、自身の能力を上手く扱えなかったのだ。その頃、地球に長らく潜伏していた宇宙人犯罪者達がある計画の為に動き始めていた。

 この作品の舞台は、『アロー』『フラッシュ』の世界とは異なるアース38と呼ばれる世界。アース38にはアローやフラッシュはおらず、ヒーローと言えばスーパーマンただ一人。そんな完全無欠のスーパーヒーロー(しかも本当はカーラが守る側であるはずの年下の従兄弟)と比べられつつも、自分を抑圧してきたカーラが次第に突き抜け、ヒーローになっていく姿が痛快にして爽快。悪党をぶっ飛ばすだけでなく、普段マスコミで働く身としてカーラが人々に贈る言葉にもグッときた。

 『スーパーガール』は今の時代に珍しいくらいひたむきに前向きなスーパーヒーロー物で、観ていて凄く励まされる作品。主人公カーラだけでなく、カーラの義姉アレックスを始めとする脇役もとても魅力的で、どのキャラも悩みや陰を抱えつつも、互いに支え合い、常に前を向こうとしている。他のアローバース作品とは異なり唯一独立した世界が舞台なこともあり、アローバース内では一番人にオススメしやすい作品かな。

 個人的に最も気に入ったキャラは、もう一人のヒーローとなるジョン・ジョーンズ。妻子を含む火星の同族達を皆殺しにされ一人地球へ亡命してきた彼は、地球人に化けて地球人には畏怖の念を与えかねない真の姿を隠し、陰ながら第二の故郷・地球を守ってきた。だが、非常事態には例え地球人に迫害されることになるのも恐れず真の姿に戻り(変身し)、スーパーマンにも匹敵する超常的な力をもってして戦う。そんなダークヒーローっぷりが超格好良い。カーラにとって時に父のような存在であるのもグッド。


 アローバースは元々、超能力者どころかスーパーヒーローすら存在しなかった世界。現実世界と同じ状態だったわけです。

 そんな世界に遂に現れた最初のヒーローは、超能力もなく、歪んた思考のもと弓矢で犯罪者に襲いかかる危険人物。まあ、ボランティアで悪人をぶちのめす人間なんて、普通は危険人物なのも当然だなと思ったもんです(実際、劇中でも危険人物扱いされてて良かった!)。

 でも、そんな危険人物もやがて心を改め、大切なものを守るべく戦い続け、本当のヒーローに生まれ変わる。そんなヒーローの影響を受けて、新しいヒーロー達が現れる。これが熱かった。

 そして、並行して、超能力者や魔法使いなどトンデモ存在なども出てくる。現実に似た世界がスーパーヒーローの世界へと変わったわけです。

 この、現実世界からスーパーヒーロー世界になったことが、アローバースの最大の魅力としてあるんじゃないかと思っています。